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zoom RSS 作品 『とくちゃんとマーガレット』

<<   作成日時 : 2012/04/29 07:01   >>

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                                     小 島 け い

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 すっかり春になりましたが、
私の部屋のテレビは、全く画面が消えたままです。

 昨年の十一月の中頃、その冬一番の木枯らしが吹きました。
その後、パッタリテレビが映らなくなりました。
北西の風が吹いて映らなくなったのだから、
東風(こち)が吹けばアンテナが元に押しもどされて、また映るにちがいない。
家族にそう話すと
『そんなアホな』
とか
『なかなかおもしろい考え方やねえ』
と言われました。

 ところがある日暖かい風が吹いた途端、テレビが復活しました。
それ以来、寒波がくるとテレビが消え、
暖かくなると生き返る、をくり返してきました。

 四月に入りもう大丈夫と思っていましたが、
先日の台風並みの風速三十メートルの風にまたやられてしまいました。

 昨年末寒波のあい間にテレビが復活した時、
「シベリア鉄道2008」という番組をたまたま見ました。
シベリア鉄道の東の出発点は、
ソ連が崩壊するまでハバロフスクだったことを、初めて知りました。
鉄道はもっと東の地域まで通っていたのですが、
秘密基地などがあったため、旅行者はハバロフスクより東へは、全く入れなかったというのです。

 もうはや何十年も昔になりますが、
ある夏私はモンゴルのゴビ砂漠にむかう旅のツアーに参加していました。
当時ソ連もモンゴルも個人では入れなかったからです。

 新潟空港で集合した時、長い待ち時間の間に、
私は目の前にとまっていたソ連の飛行機を二枚スケッチしました。
その後、同じツアーに参加する日本人、外国人数人の似顔絵も描きました。

 それは、ハバロフスクに一泊した後シベリア鉄道に乗り込んで、
皆いちようにほっとした時でした。
数人の兵士が乗り込んできて、パスポートと荷物を念入りに調べ始めました。

 私の番になり兵士の一人がスケッチブックを開けた途端、
彼の顔つきがさっと変わり、その場に緊張が走りました。
散らばっていた数人の兵士が集まってきて、
深刻な顔で飛行機の絵を見て、何か話しています。

 身分を隠してツアーに参加していたNHKのディレクターが、とっさに状況を察知して、
慌てて飛行機の後に描いてある似顔絵を指さし、
それがメンバーの誰なのかあててみて、とゼスチャーしました。

 『これは彼だ、次の絵は彼女だろう』
と兵士たちがモデルになった人物を当てるたび、
私たちは大げさに、必死に大喜びしました。
そうしてようやく、若い兵士たちは笑顔で次の車両に移動していきました。

 その時も驚きましたが、当時の政治的状況がわかった今回、今さらながら
『一つ間違えば、えらいことだった』
と思いました。

 マーガレットのなかで座っているのは東京在住の“とくちゃん”。
猫が大好きな優しい年配のご夫婦だけでなく、
そのお母様からもご丁寧なおたよりをいただき、
とくちゃんがご家族からどれほど大切にされているかを、改めて感じました。
とくちゃん、ほんとうにしあわせ者ですね。






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