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zoom RSS 作品 「ありがとう・・・」

<<   作成日時 : 2012/05/22 21:46   >>

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                                     小 島 け い

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 アトリエで絵を描いていると、いつも午後4時をすぎた頃、
1階から三太の呼ぶ声がきこえてきました。
散歩の時間だよ、という催促です。

 集中して描いている時でも4時をすぎると、
いつ呼ばれるか気が気ではなく、落ちついて描いていられなくなります。
そして案のじょう、その少し高い一声がきこえます。
”ワン!!”

 もう少し描きたかったのに、とか、
もうちょっと待っててよネ、
とか少しウルサイなあと思いながらも、
”ハイハイ”と仕方なく降りていくのが常でした。

 今、午後4時半をすぎても誰も呼びません。

 三太が自分の生命をとじたことで、
私に与えられた自由な時間ですが、
その自由が、今はむしょうに痛いです。


 数年前三太を亡くして二週間後に書いた文章が、
ふと開いた原稿用紙にはさまれていました。

 人との関わりに疲れ、
ほとんど外の世界と接触を絶ち、
限られた空間以外は、ひたすら内にこもって絵を描いていた私にとって、
三太は犬ではありましたが、”人生の相棒”のような存在でした。

 外に出るのはおっくうでしたが、
私の横を一緒に歩いてくれるだけで、人に会うことも平気、と思えました。

 夕方の散歩は、時にはしんどく思ったりもしましたが、
それが精神的にだけでなく、実際の健康面においても、
大きな働きをしていたことに、体調をくずしやすくなった昨今、改めて気付かされます。

 母や父と同じように、三太もはるかに遠いところにゆきました。
そうして、いつもすぐそばにいるようになりました。

 生きていた時も、今も、心からありがとう、です。




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