「中学生の学会員」

南のキャンパスの一室から
 
                                    南 部 みゆき

   「中学生の学会員」

  2016年の松の内が明けようとする頃、
学会で北海道に行く機会がありました。
冬の北海道に行くとあって、年明けからずっと、
未だ訪れたことのない北国の気温のチェックばかりしていました。
宮崎からは飛行機の直行便が無いため、羽田空港での乗り継ぎです。
朝6時に自宅を出てから約5時間後の11時過ぎに、
飛行機は広大な大地に建設された
新千歳空港の滑走路に車輪を下ろして着陸しました。
初めての土地で、初めてお会いする方々との出会いに、
気持ちが高ぶりました。

  今回参加した学会は、「映画を導入することで、
英語教育を理論から実践的なものへと、
より活性化することを目的とする学会」
(学会ホームページよりhttp://atem.org/)です。
私自身も映画やドラマを題材として授業で活用することも多いので、
同じような情熱を共有できる方々と知り合えるのはとても刺激になり、
勉強になります。
九州支部大会には参加したことがありますが、
今回、北海道支部大会に参加を決めたきっかけは、
北海道支部が今後、「医療英語教育ワークショップを充実させていく」という
方針を立てたことを知ったからでした。
私が勤務する大学では、ESP(English for Specific Purposes)教育という、
特定の目的のための英語教育を推進しています。
私が所属する医学部でも、1年生からESP教育を取り入れていますが、
難解な医学用語(私にとっても難解です)について、
あの手この手で学生と一緒に格闘しています。
学生があきらめないように、
また、興味を持ち続けてもらえるようにするためには、
やはり映像資料は欠かせません。
学生の将来に直結する内容とシーンの厳選、
ワークシートの準備等には確かに時間がかかりますが、
特にESP教育では必要不可欠にさえ思えます。
今回、学会に参加して改めて感じたのは、そういった、
ご自身で映像の収集や編集をして授業準備をされる先生たちの情熱です。
授業準備には授業時間の最低3倍の時間がかかる、
とどこかで聞いたことがありますが、
確かに情熱が無ければなかなか継続出来ない作業かもしれません。
(私はまだ不慣れなせいか、とても3倍では終わりませんが……)
学会での発表内容は多岐に渡り、映画を使用したコーパス分析、
メディア英語分析、医療用語のオンライン教材開発など、
どれも興味深いものばかりでした。

  大会の閉会挨拶では、
「今回の支部大会では2つの驚きがありました」と
支部長から挨拶がありました。
「1つは、はるばる九州の宮崎県から参加頂き、初雪体験をされた方がいらっしゃること」
これは実は私のことで、実際、雪の中を歩くのは人生初の体験でした。
当日のお昼休みに、
会場の建物の中にあるチェーン店のコーヒー・ショップに入り、
大通りに面した席に座ってサンドイッチを食べましたが、
目の前の窓越しに見えた、斜めに降って落ちていく雪は本当にきれいでした。
40分間見飽きることもなく、
学会の午後の部に後ろ髪を引かれる思いで会場に戻ったとき、
支部長さんにその感動をお伝えしていたのでした。
支部長が2つ目の驚きの話を続け、
「皆さん、この会場内にいらっしゃる方で、最低年齢は何歳だと思われますか?」
と問いかけました。
主催大学の先生のゼミ生でしょうか、大学生らしき人もいましたので、
19歳もしくは20歳かな、と思っていると、
「実は、13歳の中学生です」
との答えに、会場から軽いどよめきが起こり、その後自然に拍手が沸きました。
支部長から
「もし良かったら、何か一言よろしいですか」と
促された彼は、隣に座っていたお母様に助けられながらも、
「今日は、とても勉強になりました。これからもよろしくお願いします」と、
顔をやや赤らめながらマイクを持ってはっきり答えました。
「学会員として今日入会してくださって、ありがとうございます」
という支部長の言葉に、再びの拍手。
そして「あ、入会金はお母様が払われました」に、
温かい笑いが起こりました。

  会場を後にした夕方5時には、外はもう真っ暗でした。
実際、冬場の北海道は午後3時半くらいには暗くなることが多いことも
今回初めて知りました。
初めて見る美しい雪景色、初めて出会った中学生の学会員。
外は氷点下3度くらいでしたが、不思議な温かさを全身に感じながら、
私は雪の降る街を歩き出しました。





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