>■花芽萬朶 CargarVander●2013年11月号

   ■花芽萬朶 CargarVander●2013年11月号――横濱書館ペンクラブ【会員近思録】

  ●南部みゆき『消えゆく青春の橋』

私が住んでいる宮崎県宮崎市に、
県を代表する一級河川「大淀川」があります。
宮崎平野を流れ、市の中心部の南から太平洋に注ぐその川は、
私が小さいころから慣れ親しんだ川でもあります。
川が流れ込むその黒潮海域を、
県民は“日向灘”(ひゅうがなだ)と親しみを込めて呼んでいます。
河口付近は川幅が300メートルぐらいありますので、
橋からの眺めはなかなか壮観です。
数年前、お盆休みの帰省で弟夫婦と一緒に宮崎に来た甥が、
橋を渡る自動車の中から大淀川を見て、
「ああっ、うみだあー!」
と興奮して叫んだことがありました。
海の無い県で育った甥のまっすぐな感想に、車内は笑いで包まれました。
実家のいちばん近くにある橋、
「小戸之橋」(おどのはし)を渡っていたときのことでした。

実は「小戸之橋」という正式の名称を知ったのは、今年の夏です。
自動車を運転していたとき、
前を走っていた市役所の公用車の後部に貼ってあるステッカーに目が留まりました。
「小戸之橋は11月1日より全面通行止めとなります」
と書かれていました。
一瞬、「どこの橋?」と思いました。
通称の“小戸橋”(おどばし)のほうをよく使っていたので、
ピンとこなかったのでしょう。
そして、何度渡ったか知れないその「小戸之橋」が、
架け替え工事のために無くなることを、間もなくして知ったのでした。

「小戸之橋」は、私にとって、まさに“青春の橋”そのものでした。
高校時代、毎日その橋を渡って通学していました。
進学のこと、恋愛のこと、友人のことなど、
青春時代に抱える悩みや不安、焦りを常に胸に抱きながら、
その橋を3年間渡っていたことが強烈に思い出されました。
泣きながら帰ったある日、橋を降りずに堤防のほうへ方向転換して、
大淀川を目の前に膝を抱えていたことなど、
ひとつひとつをゆっくり思い出しました。
そうか、無くなるんだ……と思うと、
今となっては、ほとんど通らなくなってしまったその橋が急に愛おしくなります。
車線も歩道も立派な新しい橋のほうを好んで使っていましたが、
消えていく橋のことを思い、通行止めの日まで、
時間があれば「小戸之橋」を通ることにしました。
建造後50年経つその橋は、老朽化が目立ちました。
狭い片側1車線で、片側歩道も幅が2メートルくらいしかなく、
歩行者や自転車が混在して危険なため、架け替えが決まったようです。

11月2日に、「ありがとう、小戸之橋さよならフェスティバル」
という催し物が終日あるそうです。
最初で最後の歩行者天国となるその橋は、
川幅にあわせて仕掛けられる花火、
「ナイアガラの花火」で“有終の美”を飾る予定とか……。
私の青春を支えた橋が消えるのは寂しいかぎりですが、
私も「ありがとう、さようなら」を胸に当日は橋を歩きたいと思います。

                     宮崎大学医学部講師・宮崎県宮崎市



  ●佐藤 繁『神奈川百花百景』

横濱書館ブックレットの第一巻として、
拙著『神奈川百花百景』が公刊される予定ですが、
今夏の酷熱に阻まれて、いまだ取材にも執筆にも取りかかっていないありさまです
しかし、にわかに冷涼の気が日本列島を覆い、あわてています。
毎年、11月初旬を過ぎると、容赦ない大陸の寒気が列島を襲います。
とにかく、取材を急がなければと、
来る日も来る日も、心中に焦燥が渦巻いています。

エッセイスト・横濱書館ペンクラブ会長
・東籬南山賞選考委員会委員長
・神奈川県平塚市
・電話0463-55-1814



  ●眞部利治『原稿を書かなくては……』

一気に書く。
それが私の流儀です。
この月刊誌の連載記事も、一気に書き上げて寄稿しました。
その貯蔵が、まもなく尽きそうだと知らされて、慌てています。
私が営む会社の構造改革が進んでいるあいだに、
膨大な原稿が尽きそうだというので、
年末年始は、原稿執筆なる課題をみずからに課して、
奮励しようと覚悟を固めています。

劇作家・門土社百人委員会会長
・株式会社アットアームズ最高経営責任者
・大阪府八尾市)



  ●伊東一夫『画家の仕事〈八幡港二の世界〉』

九月中に脱稿と約束していたのですが、
いまだ果たせぬまま、焦燥の日々をおくっています。
しかし、もう、まもなくです。

                               詩人・横浜市磯子区



  ●みうらみつくに
 
やなせたかしさんの価値観の原点を探りたいと思い、
彼の絵本作家としての初期の作品を読んだのは、
僕が既に大人になってからの事でした。
その作品(『それいけ!アンパンマン』フレーベル館)に雪の谷間に落ちてしまった
小猿が助けを求める場面があり、こう叫びます。
「たすけて~、ひもじいよ~」と。
この言葉が色となり形となりまた別の言葉となり、
やなせさんの世界が広がっていきます。
生きるということに、食べるということに、
これだけこだわって作品を続けることは大変な事です、
とても難しい事です。

また一人、尊敬する作家さんが天に召されてしまいました。
お腹いっぱいになって、ゆっくりとお休み下さい。

                             創作家・東京都板橋区



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